「睡眠負債」という言葉が注目されています。その背景には、日本人の5人に1人が睡眠に問題を抱えている現状(厚生労働省「平成28年 国民健康・栄養調査」)があります。睡眠負債の蓄積は病気のリスクを高めるため、注意が必要です。今回は、「負債」をためない質の高い睡眠の方法をご紹介します。
■ 睡眠の健康効果
睡眠は心身の健康を守るための必要な要素のひとつです。睡眠には多くの健康効果があります。
- 日中に活動した脳と体を休ませる
- 記憶を定着させる
- 成長ホルモンなどのホルモンバランスを整える
- 体内環境を整える(血圧や血糖値の安定、肥満の防止など)
- 免疫力を高める(感染症やがんの予防など)
- 脳の老廃物を除去して認知症を予防する など
■ 睡眠の質の低下による「睡眠負債」に気をつけて
寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝起きたときにすっきりしない……。そんな心当たりのある人は「睡眠負債」を抱えているかもしれません。睡眠負債とは文字どおり、眠りの借金がたまっていること。この負債がたまると、心身にさまざまなダメージが及びます。
睡眠負債の蓄積は、単に睡眠時間の短さだけではなく、睡眠の質の低下も影響しています。十分寝ているつもりなのに、朝、疲れがとれていなかったり、日中に強い眠気を感じたりするなら、それは睡眠の質が低下しているサインです。
■ 睡眠負債をためない鍵は「体内時計」にあり
体の中には体内時計があり、睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を調整するほか、日中は活動し、夜間は休息するというヒト本来の生体リズムなどもコントロールしています。
そのため、夜更かしなどで体内時計のリズムが乱れてしまうと、睡眠の質が低下してしまいます。普段から、体内時計のリズムを整えることを意識して、生活することが大切です。
○体内時計のリズムを整えるポイント
□ 毎朝、決まった時間に起きる |
体内時計のリズムを一定に保ちましょう。 |
□ 朝起きたら、日光を浴びる |
体内時計は、1日(24時間)より少し長いです。日光は、このズレを修正してくれます。曇りの日は、空の明るい方向を見るだけでも効果があります。 |
□ 1日3食、毎日できるだけ同じ時間にとる |
体内時計のリズムを一定に保ちましょう。とくに朝食は、腸のぜん動運動を促し、体内時計のスイッチが入りやすくなるので、欠食しないようにしましょう。 |
□ 寝る前にリラックスタイムをもつ |
ストレスは、睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を抑制します。ぬるめのお風呂に入る、穏やかな音楽を聞くなどで心身の緊張をほぐしましょう。 |
□ 寝床にスマホは持ち込まない |
画面(青白光)を見ることで脳が興奮し、睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌が抑制されてしまいます。 |
■ 睡眠負債を招く病気にもご用心
ぐっすり眠れない、朝の目覚めが悪い、日中強い眠気に襲われる……。こんな悩みの背景には、病気が隠れていることがあります。うつ病やむずむず脚症候群などのほか、とくに気をつけたいのが睡眠時無呼吸症候群です。いびきがひどい、途中で呼吸が止まっていると家族に指摘されたら、早めに専門の医療機関で検査を受けましょう。
■ 眠りの質を高めよう
必要な睡眠時間には個人差があり、年齢を重ねるにつれて徐々に短くなるなど、世代によっても変動します。睡眠時間にこだわりすぎるのではなく、「質の高い睡眠」をとることが何より重要です。
また、前述の体内時計のリズムを整える以外にも、適度な運動を習慣にする、夕食は早めにすませる、眠くなってから寝床に入るなどの工夫で、眠りの質を高め、睡眠負債をためない生活を始めましょう!
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