2024年の夏は、記録的な猛暑となりました。熱中症によって救急搬送された人数は10万人に迫り*、過去最多を記録。今月から、企業に対して熱中症対策が義務づけられるなど、国を挙げて熱中症対策が進められています。今回は、梅雨が明ける前からはじめておきたい熱中症対策についてご紹介します。
* 総務省消防庁:令和6年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況
知っておきたい 熱中症の症状と応急処置
熱中症とは、暑さによって体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かなくなったりすることで生じる症状のこと。近年の夏は厳しい暑さが続き、今や熱中症対策は命を守るために欠かせないものとなりました。もしものときに、慌てず対応できるように、まずは熱中症の症状と応急処置について正しく理解しておきましょう。
軽症
●意識がはっきりしている ●手足がしびれる ●めまい・立ちくらみがある ●筋肉のこむらがえりがある |
すぐに涼しい場所へ避難し、からだを冷やし、水分・塩分を補給しましょう! ※症状が改善しない場合は医療機関の受診を! |
中等症
●意識がなんとなくおかしい ●吐き気がする・吐く ●頭ががんがんする(頭痛) ●からだがだるい |
すぐに医療機関を受診しましょう! ※受診までの間も、からだを冷やし、水分・塩分の補給も忘れずに! |
重症
●意識がない ●呼びかけに対して返事がおかしい ●体温が高い ●呼吸が早い ●まっすぐ歩けない ●からだがひきつる(けいれん)
|
すぐに救急車(119番)を呼びましょう! ※救急車が到着するまでの間も、可能な限りからだを冷やすなどの対応を! |
からだを冷やす方法
額や顔だけを冷やしても、からだの熱は下がりません。必ず太い血管やからだ全体を冷やすようにしましょう。
重なるほど危険! 熱中症のリスク
「熱中症は、暑い日だけ気をつけていればいい」と誤解していませんか? 室内環境や健康状態、行動など多くの条件が重なるほど、熱中症の危険性は高くなります。環境と個人によるリスクを知り、しっかりと対策をとることが肝心です。
環境のリスク
気候
●気温が高い ●湿度が高い ●日差しが強い ●風が弱い ●急に暑くなった ●熱波が発生している
室内環境
●閉めきった室内 ●エアコンを使っていない |
個人のリスク
年齢・健康状態
●高齢者 ●乳幼児 ●肥満の人 ●持病のある人(糖尿病、心臓病、精神疾患など)
●からだに障害のある人
体調
●体調不良(二日酔い、寝不足など) ●低栄養 ●脱水(下痢、発熱など)
行動
●長時間の屋外作業 ●激しい運動 ●慣れない運動 ●水分を補給しにくい活動 |
知っていますか? 暑さ指数(WBGT)
暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature;WBGT)とは、熱中症のなりやすさを表す値のこと。気温だけでなく、湿度や日射(輻射)、風の影響を含めて計算される指標です。暑さ指数によって注意するべき生活活動は異なります。梅雨のうちから、天気予報やWEBサイトなどで暑さ指数を確認するようにしましょう!
見逃し厳禁! 熱中症警戒アラート
熱中症警戒アラートは、熱中症の危険が特に高いと予測されたときに発表される情報です。その基準は暑さ指数33以上。また、都道府県全域が暑さ指数35以上となる「災害級の暑さ」が予測された日には、熱中症特別警戒アラートが発表されます。これらのアラートが発表された日は、外出を控え、室内でも積極的な熱中症対策に努めましょう。
梅雨明け“前”の熱中症対策
熱中症対策は、本格的に暑くなる前からはじめるのが効果的です。特に、梅雨が明ける前に行っておきたいのが、「暑熱(しょねつ)順化(じゅんか)」。運動や入浴で汗をかくことで、からだを暑さに慣れさせることをいいます。暑熱順化には数日~2週間程度かかるといわれています。熱中症になりにくいからだをめざして、外出のついでやすきま時間を活用し計画的に進めましょう。
日常生活でできる暑熱順化(例)
●ウォーキング:30分 週5回 ●ジョギング:15分 週5回 ●筋トレやストレッチ:30分 週5回~毎日 ●入浴(湯船につかる):2日に1回
梅雨明け“後”の熱中症対策
梅雨が明け暑さが本番を迎えたら、暑さから身を守る対策を忘れないようにしましょう。もしものために緊急連絡先を決めておき、外出先の「涼める場所」を把握しておくことも大切です。
活用しよう! クーリングシェルター
暑さから身を守るために、市区町村が指定した休憩施設がクーリングシェルター(指定暑熱避難施設)。熱中症特別警戒アラートが発表されたときに利用することができます。その他にも、暑い時期に「涼み処」などの名称で市区町村独自に施設を開放していることもありますので、お住まいの市区町村の広報誌やホームページを確認してみましょう。
梅雨明け前の「暑熱順化」と梅雨明け後の「暑さ対策」で、熱中症を寄せつけない夏を過ごしましょう!
参考文献
環境省:熱中症環境保健マニュアル2022
日本生気象学会:日常生活における熱中症予防指針Ver.4
日本救急医学会:熱中症診療ガイドライン2024
☆次回のテーマは『夏こそ注意! 家庭でできる食中毒対策』を予定しています。 高温多湿な日本の夏は、細菌が繁殖しやすい時期でもあります。この時期に特に気をつけたいのが、食中毒。買い出しや調理などの場面で、細菌を「つけない、増やさない、やっつける」対策をしっかりと行うことが大切です。次回は、暑い季節に欠かすことのできない食中毒対策のポイントについて紹介します。 |
|