雨が降ると関節が痛む、腰痛がひどくなる、季節の変わり目に体がだるくなる、などは多くの人が見聞きし、あるいは体感しているのではないでしょうか? 今回は、とくに気象と痛みの関係について、そのメカニズム、予防法などをご紹介します。
■ 「天気痛」は、気候の変動で起こる「気象病」のひとつ
私たちの体は、気象(気温、気圧、湿度など)※1の影響を受けており、その変化によって体に負担がかかるため、多くの疾患に関係しているといわれています。
このように気象の変化と連動して発病したり、症状が悪化したりするような病気を総称して、「気象病」※2といいます。
※1 具体的には、温度の急激な変化、フェーン現象、低気圧に伴う寒冷前線の通過など。
※2 気象病という名称は、個々の病気をさす正式な医学用語ではありません。環境変化に適応しづらい
高齢者や持病のある人などの診察は、こうした点にも着目して行われます。
○気象変化によって誘発される疾患
- リウマチ、外傷、神経疾患などの慢性組織障害における疼痛(とうつう)
- 心臓、循環器障害:肺塞栓、脳出血、心筋梗塞、狭心症、急性心臓死
- 結石症:胆石症、尿路結石
- 急性乳児テタニー
- 急性緑内障
- 感冒(かぜ)
- 神経障害(自殺を含む)
- 死亡(すべての場合を含む)
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出典:
伊藤繁(2003)「気象と喘息の関連をさぐる」, 『地球環境』8(2), 一般社団法人国際環境研究協会, P183-192 表1より
「確証されたもの」のみ抜粋。
このほか、頭重、いらいら、肩こり、不眠などの不定愁訴も気象と関連することが多いようです。
■ 天気痛と自律神経
天気痛ドクターと呼ばれる佐藤純先生(愛知医科大学医学部学際的痛みセンター客員教授)は、上記の表のリウマチなどの疼痛にみられるように、気象病の中でも痛みを伴うものを「天気痛」と呼んで研究されており、気象条件の中で天気痛に大きく影響しているのは「気圧」と考えられると報告しています。
気圧が下がる(天気が悪くなる)と、この変化をストレスと感じて自律神経(交感神経)が活発になって、痛みが強くなってしまいます。痛みの記憶は鮮烈なため、興奮する自律神経によって痛みの記憶回路がつながり、古傷が痛み出したり、痛みの予兆を感じるようになるそうです。
また、気圧の変化を感知するのは耳の奥の内耳であるため、内耳の感受性が高い人ほど天気痛を引き起こしやすい可能性があることも示唆されています。
■ 天気痛のセルフケア
天気痛を引き起こす詳細な原因、内耳との具体的な相関関係などは、現在もまだ研究が進められている段階です。また、気象から受けるストレスからも完全には逃れられませんが、ストレスに強くなるライフスタイルは、天気痛の予防・軽減につながります。ぜひ、実践していきましょう!!
【セルフケア①】天気図を読む
天気痛の予防には「どのような気象条件で症状が出るか」を知ることが重要なため、天気予報を有効に活用したいもの。天気、気圧の変化、最低気温の3つに注目しましょう。
【セルフケア②】天気に負けない体をつくる
自律神経の乱れには、ライフスタイルや生活のリズムが大きく影響しています。日常生活を見直し、自律神経を整えて、天気に負けない体をつくりましょう!!
1日の流れの中で、意識して自律神経を整えていこう!
朝 |
- 毎朝定刻に起きて、朝日を浴びよう。ホルモンの分泌が活性化して、体のリズムが正常に調整される。
- 朝食は、自律神経を整えてくれるので必ず食べよう。さらに1日3食を規則正しく食べると就寝・起床・食事の生活リズムが整いやすくなり、自律神経の安定につながる。
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昼 |
- ウォーキングなどの有酸素運動、ストレッチングなどはストレス解消になり、自律神経の安定によい方法。適度な運動を習慣にしよう。
- ストレスや緊張を感じると、自律神経が興奮状態に。そんなときは深呼吸を。息を吐く時間を、吸う時間の倍にするのがポイント。
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夜 |
- 睡眠不足は自律神経のバランスを崩す最大の敵。睡眠を大切にしよう。
- ぬるま湯の入浴は、心地よい睡眠を招く。
- 良質な睡眠のために、寝る前のスマホ、カフェインは控える。
- 熟睡できるように、寝室の室温・湿度も季節に応じて心地よい状態に調整を。
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