私たちが普段当たり前のようにしているカレーの作り置きですが、この「2日目のカレー」が原因の食中毒がしばしば起きています。今回は、熱に強い食中毒菌とおもな対処法についてご紹介します。
■ 作り置きカレーの危険
身近な家庭料理として定番のカレー。とくに、2日目のカレーは味が染み込んでおいしいといわれます。そんな2日目のカレーで食中毒が起きています。その原因は「ウェルシュ菌」です。
ウェルシュ菌は人や動物の腸管、土壌、食品などにいる細菌です。食品ではとくに肉の汚染が多く、細菌が大量に増殖した状態で人が食べると小腸内でさらに増え、毒素を出して腹痛や下痢を引き起こす場合があります。
ウェルシュ菌は加熱で生存に適さない環境になると、細菌が“殻”のような「芽胞」を作るのですが、なんと芽胞は100度で1時間以上の加熱にも耐えられるといいます。
すぐに食べれば問題はありません。しかし、室温に放置され、温度が50度くらいになると、熱から生き残った細菌の胞子が芽胞から発芽して、増殖を始めます。45度では最も増殖速度が速く、大量に増殖した結果、食中毒を引き起こします。とくに、大量のカレーやシチューなど、とろみのあるものは中心部分の温度がゆっくりと下がるので、注意が必要です。
■ ウェルシュ菌の増殖を防ぐには
作り置きしたカレーを保存するときなどは、次の点に注意しましょう。
- 大量の調理を避ける
- 調理後はすぐに食べる(加熱後、2時間以上室温で放置しない)
- 保存する場合は、早く冷めるように容器に小分けし、冷蔵庫に入れる
■ ほかにもある熱に強い食中毒の原因菌
ウェルシュ菌による食中毒は、カレー以外でも起きています。シチュー、ロールキャベツ、肉じゃが、麻婆豆腐などの加熱調理食品です。
一般に食中毒菌の予防として加熱による殺菌がすすめられているため、「加熱済み食品は安心」と思いがちですが、ウェルシュ菌、セレウス菌、ボツリヌス菌の芽胞は耐熱性があり、加熱では芽胞を死滅させることはできません。また、黄色ブドウ球菌のつくる毒素は加熱しても分解されないため、増殖後に加熱しても食中毒は防げません。これらの細菌を増殖させない対策が必要です。
○熱に強い食中毒菌一覧
種類 |
おもな感染源となる食品 |
潜伏期間 |
予防のおもなポイント |
ウェルシュ菌
| 大量に調理され、保存された食品 |
6~18時間 |
細菌が増えやすい温度を長く保たない。保存は小分けして早く冷ます。 |
セレウス菌 |
(嘔吐型)
ごはん、麺類などのでんぷん質の食品
(下痢型)
肉類のスープ |
(嘔吐型)
30分~6時間
(下痢型)
8~16時間
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大量調理、作り置き、保温を避ける。
調理後は小分けにして速やかに低温保存。
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ボツリヌス菌 |
ビン詰、缶詰、容器包装詰め食品、保存食品(ビン詰、缶詰は特に自家製のもの) |
8~36時間 |
真空パックや缶詰が膨張していたり、食品に異臭(酪酸臭)があるときには絶対に食べない。
※はちみつには、ボツリヌス菌が混入している可能性があり、1歳未満の乳児がとると「乳児ボツリヌス症」を引き起こす可能性があるため、与えないよう注意する。 |
黄色ブドウ球菌 |
にぎりめし、寿司、肉、卵、乳製品などの調理加工品及び菓子類など多岐にわたる |
30分~6時間 |
手指に切り傷がある人は、食品に直接触れない。
手指を十分に消毒。
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カレーを冷蔵庫で低温保存しても、一晩あれば味は具材の内部まで均質に浸透しますし、煮物は具材を小さく、薄く切れば、温度が早く下がり、味も均質に染み込みやすくなります。安全に配慮して、おいしい“2日目”のカレーを楽しみましょう。
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